ヘリコプターに乗りたいんじゃ!

その1 高橋、ヘリ(実機)に乗る

 ヘリコプターに乗りたいんです。乗りたいって言ってもシャレオツなヘリでワイン飲みながら夜景を・・・とか、そういうのじゃないんです。

 ラジコンも回転翼一筋ン十年、ヘリ、マルチコプター、ドローンと色々飛ばしてきました。ですが、白状すると実機に乗ったことはただの一度もなかったんです。そりゃまあ探せば体験搭乗だの遊覧飛行だのは多々あったはず。けど、乗らない理由がいくつかあって、その第一が『高い所がダメ』というもの。どのくらいダメかというとゲームの中で高い所歩くのだって怖いんですよ!だから到底無理。そして、乗ったことのある友人から聞いた話では『あれは3次元で飛ぶから怖さが違う』というオドシ。そりゃあ乗りませんよね。

 ところが昨年のある日。出張で福岡滞在中に土日を挟むことがあったのですが、何と福岡の宿が取れずにやむを得ず小倉に滞在。小倉でどこ行けばいい?と福岡で訊いたところ皆して門司港行けとか言うんです。だがしかし門司港は以前行ったしな~と検索してたら何と関門ヘリ遊覧というのを発見。しかも機体はロビンソンR44。ロビンソンといえばアレですよアレ。今時ピストンエンジン(いわゆる普通のガソリンエンジンみたいなもん)のヘリで練習機によく使われているやつですよ。しかも事前予約とか無しで飛び込みで行っても乗せてくれるとか。こりゃ~もう行くしかないと一路下関へ。

 そういやお前、高い所ダメじゃないっけ?と疑問に思われたでしょう。はい、その通りです。ですが、飛行機は乗れるんです。乗れるどころか平気なんです。ジェット機なんてのは乗ってる感覚はないんですが、かつてアメリカでセスナ(C172)なら乗ったことがあるので、たぶん飛行機は平気なはず・・・と勇気を出したわけです。ただし、飛行機とヘリの大きく違うところは視界の広さが全然違うところで、ヘリは足元まで見えるような窓なわけでして、大丈夫かいなという不安も抱えつつ暇だったのでチャレンジすることにしました。

 でまあ、行ってみて「ロビンソン乗れると聞いて」と飛び込んだら「ライセンス持ち?」とか聞かれたんですが「いや、ラジコンしか」と答えるとえらい歓待される始末。そしてパイロットさんは、お馴染みの返事、「ラジコンとかわりませんよ」と。これいったい何なんでしょうね。アメリカでも実際のヘリパイロットに「俺、ラジコンヘリなら飛ばせるんだけどね」と言うと「同じだよ!」と答えるし。

というわけで乗ったお写真がこちら。

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 一人で行ったのでパイロットの横に乗せてくれました。もっともロビンソンは左席のスティックとかペダルは取り外せるので遊覧目的で使う機体は左側には何も付いてないお客さん席なのですが。

 んで、怖くなかったかというと全く平気!やはり自分は飛行する機械なら平気なようで、どうも高い所に自分の足で立ってるのが不安になるだけのようです。もちろんパイロットの腕が相当良くて不安を一切感じない飛行だったつうのが大きいのでしょうが。

 そしてわかったことはロビンソンというかピストンヘリはとても良いものだということ。てっきりジャイロとか付いているもんだと思ってたのですがパイロットさんに聞いたところ、そんなものは一切付いてなくテールジャイロ(通称:ケツジャイロ)すら付いていないそう。全てマニュアルで飛ばすそうです。そんな面白いフライング・マシーンがまだあったとは!

その2 乗りたい欲が高じる

 実機に乗ってみたところ、とにもかくにもヘリはやはり良いものだという感想しかなく、実機に乗りたい欲は増すばかり。そこで調べたところ乗る方法はいくつかあって、当然ながら遊覧もそのひとつ。よくよく調べてみるとロビンソンに乗れるところは少なくないようで。

 自分でスティックを握りたいとなるとかなり厄介。ライセンス取りゃいいじゃん!と思っても、まず費用的に厳しい。そんでもって、この年齢になって身体検査通るかも疑問。大体、ライセンス取得する間に無職で何とかなるかって、そりゃあ無理だわなと。

 ハワイかグアムに行って乗っけてもらうというのが、おそらく一番簡単。簡単とはいえ渡航しなきゃだし、そのためだけに行くんか~い、ともなりそうではあるのですが、将来ハワイかグアムに行く機会があったらオプションとして選択肢に入れておきましょう。

 というわけで実機はなかなか遠い道のりなので諦め!でもやはり何とかならんのかと。

その3 そうだアレがあった!

 そこでハタと思い出す。俺はかつてF-16で敵を追い回し、リアジェットで空母に着艦したりしておったではないかと。そうですフライト・シミュレータという良いものがあったではないですか。

 かつてフライト・シミュレータといえばMS FSつうのが定番だったのですが、調べてみると今はなんか違うらしい。そしてそもそも飛行特性も操縦方法も全くことなるヘリはどーすりゃいいんだいという大問題。そこでさらに調べてみると今ではX-Planeという良いものがあることを発見。何とヘリもあるではありませんか。しかも追加で機体も売られていて、Dreamfoilからロビンソン R22も売ってる!しかも3,000円くらいと実機の1万分の1のお値段!こりゃあ、やるしかないでしょうと、いったい何年ぶりだかわからないくらいでフライト・シミュレータを再開!

※X-Plane、難しいって話をよく見かけるのですが、使ってみてわかりました。これはゲームじゃなくてほんとにシミュレータなんです。なので機体のエンジンのかけ方とか知らないとどうしようもない場合があります。実機のマニュアルを見ないとわからない所もあって、天候をリアルタイムにして飛んでると冬場にCarb Ice(キャブレターが凍る)でエンストして落ちました。Carb Heat(キャブレター・ヒーター)を入れてなかったのが悪いのですが、そもそもCarb Heatがどこに付いてるのか探すのに一苦労でした。

 その4 あれ何か違うぞ?

 フライト・シミュレータがあれば万事解決と思ったものの、やってみると何かおかしい。ヘリの機体(DreamfoilのR22)は『よくできている』らしいのですが、そもそも設定の段階でおかしいんです。

 考えてみりゃあ当たり前です。そもそも飛行機とヘリコプター、すなわち固定翼と回転翼は挙動も全く違えば操作方法も全く違うわけで、ジョイスティック1本で飛ばせるわけではないことに今更気付くわけです。

 まずやっかいなのがアンチトルクペダル。ヘリをご存知ない人には何のこっちゃらわからん部分ですが、足元にペダルがあって尻尾の向きを制御するペダルです。飛行機を知ってる人にはラダーペダルと言えば通じるのですが、ヘリではこれはアンチトルクペダルと言ってテールローター(後ろで回っている小さいプロペラ)を制御することで、メインローター(上のでっかいプロペラ)の反トルクを制御するというものです。ラジコンの場合にはこの部分にジャイロを使うことで自動的に補正するのですが、ロビンソンにはそんなものは付いてません。すべて人力制御です。ただ、この部分は飛行機用のラダーペダルを買えば流用することは可能です。ジョイスティックだけで代用しようと思うとスティックのツイスト(ひねり)がラダー操作になるのですが、これはとてつもなく使いにくいです。

 ヘリコプターが飛ぶ仕組みはエアバスのこのページでもご参考に。エアバスはアンチトルクペダルと言わずラダーペダルと呼んでいるようですが。

 次にやっかいなのはコレクティブ・レバー(エアバスのページ見てね)。これはスロットルに相当するといえば相当するのですが、要は揚力コントロールをする部分。見ての通り車のサイドブレーキのようなものです。ジョイスティックの場合にはスロットルで代用できるにはできるのですが、ホバリングや着陸をする際の操作はかなり難しくなります。

 サイクリック・スティックはジョイスティックでも代用できる部分なのですが、実はこれがまたやっかいない部分でした。そもそもヘリの場合にはジョイスティックのセンターがないんです。手を離せばまっすぐ何とかなるという物ではなく、常にどっちかの方向に操作していないとちゃんと飛びません。なのでヘリ用にジョイスティックを代用している人の場合、センタリング用のバネを抜いている人が多いようですが、これまた困ったことにThrustmaster等のジョイスティック、電源投入(USBに繋いだ時)にスティックがセンターにあることを期待し、そこで較正するためバネを抜いてしまうと真ん中が出ないおかしな位置が真ん中になってしまうので、操作感覚と著しくズレてちゃんと飛べなくなってしまいます。

 ゲーム用ジョイスティックのさらなる問題がデッドバンドの存在。これはスティック中央付近で精度が出ないので不感帯が設けてあり、ある程度動かさないとスティックが機能しないのですが、ヘリの場合には中央の僅かな操作が必要なので、とても操作しずらくなります。特に、安いスティックでは中央付近のデッドバンドが大きいです。

 実はジョイスティックとラダーペダルで何とか離着陸と飛行はできるようになったのですが、何かしっくりこないというか細かい操作ができないです。

その5 ヘリ用コントローラーを探す

 じゃあヘリ用のコントローラーを買えばいいんじゃない?と探し始めます。フライト・シミュレータはそれなりに人気のあるジャンルなのできっと売ってるはずです。が、しかし・・・

 いやいやいやいや。フライト・シミュレータはゲームっちゃゲームなのですが、実のところゲームなんかではなくまさにシミュレータなんです。X-Planeはハードウェアがスペックを満たせばFAAの認可が取れるとか言ってるわけでして、もうう何が言いたいかおわかりですね。お値段がゲーム向けの機器と全く違うのです。ヘリ用のコントローラー、$1,000以上が普通。探しまくって一番安いのでも、$400~というお値段。さらに言うとサイクリック・スティックが足の間から出るタイプばかりで、ロビンソンのT-barスタイルのものは無きに等しいです。あっても実機練習用のシミュレータ向けだったりして、とてもすごいお値段です(一式そろえると$2400以上)。しかもフロアマウントしないとなので家から出せないコックピットが出来上がります。

 そもそもフライト・シミュレータ、人気があると書いたものの、実はとてもニッチなジャンルで、人気があるのはどちらかといえばエアライン系の飛行機。ヘリなんてニッチ中のニッチで、コントローラーのマーケットがとても小さく、安く作れないわけです(と、海外のフォーラムでもボヤかれてました)。エアラインか小型の固定翼ならばフライト・ヨーク(ハンドルみたいなの)とスロットルで何とかなるので、安くはないですがSaitek(Logitech)で、まだ買えるお値段で売ってます。

さあどうするか?そこでゴーストが囁くのです、作れ・・と。

製作編へ続く